運動学習の基礎と幼少期運動スキルの獲得 

人間発達は遺伝と環境、あるいは成熟と学習の相互作用という視点から理解されてきています。中枢神経疾患における機能回復も同様な理解がなされ、運動制御の発達、運動学習の発展は運動学習の結果と考えられています。また、運動学習を身体運動の自由度が拘束されていく過程として自己組織化現象としても捉えられます。運動学習の主な理論として、シュミットのスキーマ理論、フィッツの三相説などがあります。

運動学習の基礎理論

スキーマ理論は、たとえば街で見たことがない種類の犬を見ても犬と分かるように、学習された動作は、個々の具体的な運動プログラムによって記憶されているのではなく、抽象化されたスキーマ(図式)によって記憶されているというものです。スキーマは過去の経験や応答、遂行結果により構成され、運動プログラムの選択を行う再生スキーマと、動作遂行中あるいは遂行結果の修正や調整の参照としての機能をもつ再認スキーマからなっています。

三相説とは、繰り返される学習過程を、運動技能が向上していく様子から初期相、中間相、最終相に段階化したものとなります。初期相は認知相ともいわれ、運動課題や目標達成のための方法についての言語的理解から学習が始まる、いわゆる宣言的記憶の獲得段階です。次に動作は、協調性のある滑らかな運動となる中間相の段階となります。中間相は連合相ともよばれ、感覚フィードバックや結果の知識により自ら運動の誤りを修正できるようになり、運動の言語的説明が困難となります。いわゆる宣言的記憶から手続き記憶へ変換が生じる段階となります。さらに動作は時間的・空間的により高度に統合され、無駄なく、速く、滑らかとなる最終相に到達します。最終相は自動相ともいわれ、手続きは自動化され、運動に対する注意は減少し、言語は動作遂行に不必要となります。この段階になると動作は無意識に遂行可能となり、別のことをしながらでも課題を遂行できるようになります。

幼少期の基本的運動スキルの習得

スポーツスキルの獲得には神経系の発達する幼少期が特に大事です。スポーツパフォーマンスの能力は筋力や持久力などのフィジカルな能力と、運動の機能によるスキルの2つに大別されます。「身体の各機能に対して向上が著しい時期にそのトレーニングをより集中的に行う」ことは適切な方法の一つといえます。身体の各機能には、それぞれ著しく発達する時期があります。神経系の著しく発達する幼少期はスキルトレーニングを重点的に行うべき時期ということになります。なお、フィジカルな能力の強化に重点を置くのは第二次性徴以降からが望ましいですね。

脳、脊髄等の大きさの発達を示す神経型は、幼少期(~6歳くらい)までに成人の約90%の発育を遂げるとされています。この時期は「運動の基本的スキル」の獲得が大きく進む時期と考えられます。例えば多くの球技で行われる基本的な動きである投球動作のスキルの年代ごとの獲得の様子を見ると、2歳の段階では「腕だけで投げていた」のが「体幹も使う」ようになり、6~7歳くらいまでには成人と同様に「踏み込みも使って全身で投げられる」ようにスキルが成熟していきます。この時期に習得される運動スキルの能力は日常動作も含めた運動全般の基本になるということで「基本的運動」と呼ばれます。

これらの運動は少年期以降、また成人におけるスポーツスキルの基盤となると考えられています。多様な運動形態を経験してスキルの基盤を作るために、「できるだけ多様な運動を実施して多くの運動形態を習得する」ことが重要とされています。この時期には、いろいろなスポーツや木登り、跳び箱のような器械体操など多くの”遊び”を行い「未習得な運動形態を残さない」ようにすることが大事とされます。専門化したスキル教育に専念するのも悪いことではないとは思います。しかし、将来どのようなスポーツを行う場合においても、運動全般の基本となる「基本的運動」の技能をオールラウンドに身につけておくことを優先したほうが良いと思います。

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